わが国の企業のB/Sの多くをCREが占めているにもかかわらず、これまではCREを戦略的に活用してこなかったのが実態ではないでしょうか。しかし、これまでどおり不動産を保有するだけでよかった時代は終わりを告げ、以下のような理由から、企業にはCREを戦略的に展開する必要性が生まれたのです。
(1) 投資家をはじめとするステークホルダーへの説明責任 近年、ステークホルダーは”モノ言う株主”として、企業の経営戦略に介在してきました。今、企業は不動産を”持つ意味””借りる意味”を問われ始めています。
(2) 減損会計をはじめとする一連の会計制度改革 会計制度の改革により、キャッシュフローを重視し、資産効率を極大化する必要がでてきました。不動産はB/S上で占める割合が高く、企業価値へのインパクトも大きいのです。
(3) 不動産価格の変動による価値リスクの顕在化 バブル絶頂期やバブル崩壊後は、地価動向が画一的で、全ての不動産は同じような運用を行っても大きな問題とならなかったと思われます。しかし、近年の地価動向は、立地を始め様々な要因によりその価値が変動的で運用方法も異なるため、戦略的な展開が必要になっています。 このように、内部要因だけではなく、外部要因である不動産市場を意識せざるを得ないことがCRE戦略への取組みの難しさにつながっています。

CRE(企業不動産)戦略の必要性が注目される背景としては、
1. 固定資産減損会計の導入
販売用不動産については、既に2003年3月期から減損会計が義務付けられ、さらに株式上場会社や新会社法の「大会社」に対しては2006年3月期から強制適用されました。
2. 会計監査の厳格化による企業保有資産の適正化ニーズの高まり
粉飾決算に対する監査法人の処分等、監査および会計ルールの変更による損失計上リスクへの対応
3. 不動産証券化市場の拡大
平成17年度の証券化不動産は約6.9兆円(国土交通省調べ)。都心優良物件の希少化により、法人保有資産 へ注目が集まり、適正運用(価値の可視化)がなされている物件の市場供出が期待され始めた。
CREマネジメントに影響を与える制度
2010年以降、投資用不動産は、有価証券報告書(四半期毎)上、CRE時価と概要を内部統制に準拠し開示しなければならなくなり事業用不動産、販売用不動産と連携したマネジメントが必要である。