不動産ニュースでは、華やかな取引や注目物件の話題が多く取り上げられる一方で、「売れない不動産」というテーマはあまり目にすることがないかもしれません。しかし、全国各地には実際に「売れない不動産」が存在しています。それは、その不動産に需要がない、というシンプルな理由によるものです。この現象は、特に相続案件で顕著に見られます。
昭和や平成バブル期には、不動産価格の上昇を背景に、場所を問わず多くの人が投資感覚で土地を購入していました。しかし、その後の時代の変遷や価値観の変化により、縁もゆかりもない土地を所有したまま、活用も売却もできずに困っているケースがしばしば見受けられます。当時は何らかのご縁や事情があったにせよ、今では不要となった不動産が、相続問題の一因となることも少なくありません。
また、家族で利用していた別荘も、この「売れない不動産」に該当する場合があります。現地でお話を伺うと、そこに込められた家族の思い出やエピソードを聞くことが多いですが、市場の原理は思い出や感情とは無関係です。こうした不動産は、被相続人と相続人の間で意見が対立することもあり、将来の扱いを巡る議論が避けられません。
さらに、農地もまた、「売れない不動産」として問題視されることがあります。当方の経験では、相続人が農業を離れているケースが多く、代々受け継がれてきた農地が宙に浮いた状態になることがありました。このような場合、農業を続けている親族を見つけ、農地を譲渡することで問題を解決した例もあります。しかし、根本には農業で生計を立てる難しさという現実が横たわっています。
こうした背景から、「売れない不動産」を専門に引き取る事業者も存在します。彼らは、固定資産税などの経費を5年分や10年分といった形で現金を添えて提供されることを条件に、不動産を引き取ることがあります。相続人にとっては、不動産の問題を終わらせる手段の一つとなるのです。過去には伊豆熱川のマンションでも似た事例があり、最終的に相続人の一人が「それなら私がもらう」と言い、相続手続きを終えたこともありました。
現代は人口減少の時代。不動産が「資産」ではなく「負動産」となってしまうケースが増えています。不動産を所有することが必ずしもプラスになるとは限らない時代に突入しているのです。価値観の変化がもたらしたこの現実を見据え、何でもかんでも欲しがるのではなく、慎重に判断することが求められます。不動産もまた、時代の流れとともに、その在り方を見直す必要があるのです。
